各感染症の概要と潜伏期間

各感染症の概要と潜伏期間

各感染症の概要と潜伏期間

病原体による発症プロセス

感染症は潜伏期間を経て発症する

細菌やウイルスが体内に侵入してから症状が出るまでのことを潜伏期間といいます。

細菌やウイルスはそれぞれに異なった特徴を備えています。また、人もそれぞれに健康度合いや免疫力などの個人差があり、細菌やウイルスを保菌した状態でも症状が軽かったり発症しないケースなどもあります。

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感染症別潜伏期間

風邪(風邪症候群)

風邪は医学的には風邪症候群といいます。発熱をはじめ、くしゃみ、鼻水、鼻づまり、悪寒、食欲不振、倦怠感(だるさ)、咽頭痛(のどの痛み)、頭痛、下痢、関節痛などの全身症状が現れます。一般に風邪の治療には抗生物質の投与、栄養補給、水分補給、静養が求められます。

のどの痛み

ライノウイルス

  • 潜伏期間 約1~3日

コロナウイルス

  • 潜伏期間 約1~14日

RSウイルス

  • 潜伏期間 約4~6日

アデノウイルス

  • 潜伏期間 約1~10日

パラインフルエンザ

  • 潜伏期間 約2~6日

インフルエンザ

インフルエンザは急激な高熱を伴う風邪症状に似た全身症状が現れます。高い感染力が特徴で、感染力が最も強いのはインフルエンザA型です。直接感染、飛沫感染するため学校や高齢者施設などによる集団感染リスクがあります。毎年12月頃から多くなり、1月をピークに長い場合5月頃まで流行します。流行期の密集を避ける、流行期に合わせたワクチンの接種、マスクの着用、うがい・手洗いの徹底、栄養と充分な睡眠が予防対策です。

  • 潜伏期間 約1~2日(最大7日)
インフルエンザ

感染者との最終接触から約10日経過しても症状がない場合は無感染と考えて良いでしょう。
感染者は、発症の前日から症状が軽快して約2日後までは人に移してしまう可能性があります。

水疱瘡(みずぼうそう)

水疱瘡の感染経路は主に空気感染です。水疱瘡は一般に生涯一度の感染ですが、抗体の消滅による再発の事例も報告されています。9歳以下に多く発症し、特徴的な発疹が体の一方に密集して現れます。症状が軽快してからもウイルスは体内に残存するため、体力が弱ったときなどに帯状疱疹となって再発することがあります。

  • 潜伏期間 約2~3週間

帯状疱疹(たいじょうほうしん)

水疱瘡の軽快後も体内にはウイルスが残り続けます。体力や免疫力が低下したときにウイルスが再活動することで帯状疱疹として発症します。また、水疱瘡にかかったことがない人でも、帯状疱疹患者との濃厚な接触により感染する場合があります。帯状疱疹は全身の片方に密集して特徴的な発疹が現れます。

  • 潜伏期間(水疱瘡にかかったことがある人) 生涯
  • 潜伏期間(水疱瘡にかかったことがない人) 約2~3週間

流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)

一般に「おたふく」と呼ばれているのが流行性耳下腺炎です。耳の下から頬、あごにかけて腫脹がみられることで広く知られている感染症です。

流行性耳下腺炎 は、ムンプスウイルスによる飛沫及び接触によって感染し、2歳から12歳くらいまでに多くみられます。

おたふく

腫脹のほか、発熱や、頭痛、咽頭痛(のどの痛み)がみられることがあり4,5日で治ります。

  • 潜伏期間 約1~3週間

咽頭結膜熱(プール熱)

プールの水を介しての感染で広がることから、一般にプール熱といわれているのが咽頭結膜熱です。アデノウイルスによる飛沫、経口により感染・発症します。免疫力の弱い子供の感染が多く、症状は高熱と共にのどの炎症、結膜炎が一週間程度続く場合もあります。 咽頭結膜熱は抗生剤が効かないため治療は対処療法が中心となります。学校保健法により症状の軽快後、2日経過しないと原則登校は出来ません。

  • 潜伏期間 約4~5日

手足口病

手足口病

手足口病はエンテロウイルスにより飛沫・接触で感染します。症状は発熱や咽頭痛(のどの痛み)加え、手や足、口の中に痛みを伴う特徴的な発疹がみられることで有名です。手足口病そのものに対する治療はありませんので、各症状への対症療法が中心となります。10日程で治ります。

  • 潜伏期間 約3~5日

麻疹(はしか)

麻疹ウイルスによる飛沫・接触、空気感染で伝染し、予防接種を受けていない乳児を中心に春から夏にかけて多くみられ、成人にとっても重い病気のひとつです。発熱をはじめ風邪に似た症状があらわれた後に一度解熱し、口腔内頬の内側に特徴的な斑点(コプリック斑)が出ます。その後再度発熱し、全身に発疹が広がります。麻疹の症状はこのような現れ方の順番に個人差がほとんどないという特徴があり、発疹は約3日間続きます。 学校保健法により症状の軽快後、3日経過しないと原則登校は出来ません。

  • 潜伏期間 約2週間

風疹(ふうしん)

風疹は、水疱瘡や麻疹ほどの感染力はありませんが、風疹ウイルスによる飛沫や接触感染により、春から初夏にかけて子供に多く発症します。発熱をはじめ頭痛、倦怠感などによる症状がみられ、その後全身に細かい発疹があらわれます。その他、目の充血や耳の後ろが腫れる場合もあります。一般に子供は症状が軽く、大人は重い傾向があり、風疹そのものに対する特効薬はないため対症療法により自然治癒を待ちます。予防には風疹ワクチンがあります。

  • 潜伏期間 約2週間

結核(けっかく)

結核の治療が確立していないころは「不治の病」として恐れられ、昭和初期までは日本の死因第一位となっていました。今でも世界で死亡率の高い感染症の一つとされており、決して昔の病気ではありません。結核菌は空気・飛沫によって感染し、初期症状は風邪に似ています。日本人に多いのは肺結核で、免疫力の弱い高齢者や糖尿病患者、人工透析患者などは特に注意が必要です。乳幼児にはBCGワクチンがあります。

  • 潜伏期間 約半年~2年

テング熱

テングウイルスを運ぶ蚊(ネッタイシマカ・ヒトスジシマカ)の媒介による熱帯病です。感染してもほとんどの場合は無症状ですが、発熱のほか頭痛や筋肉痛、関節痛、発疹がみられることがあります。適切な治療により生命の危険はほとんどありません。

  • 潜伏期間 約2~14日

日本脳炎

ブタの体内で増えたウイルスをコガタアカイエカという蚊が媒介することで人を刺し感染します。日本ではワクチン接種により流行はありませんが、毎年夏にこのウイルスを運ぶ蚊が日本でも確認されていますので、感染のリスクはあります。

  • 潜伏期間 約6~16日
蚊

高熱や頭痛、神経障害や意識障害、各後遺症が約半数の割合で残る重い病気で、致死量は約30パーセントといわれていますが、感染しても発症する人は100~1000人に一人程度といわれています。日本脳炎に直接的に作用する特効薬はなく抗生物質も効きません。

エキノコックス症(包虫症)

きつね

エキノコックス症とは寄生虫(包条虫)が人の主に肝臓に寄生しすることで腹痛や皮膚の激しい掻痒感、発熱等の症状が出る感染症です。キツネとネズミの間で寄生し合い、その便に混じった寄生虫の卵が何らかの理由で人の口から体内に侵入することで感染します。山菜などはきちんと洗うか加熱すること、生水を飲まないこと、キツネやネズミに接触しない、近づかないことが予防となります。治療は手術と化学療法があります。

  • 潜伏期間 数年~数十年

エボラ出血熱

エボラ出血熱はウイルスによる感染症です。水痘・帯状疱疹ウイルスのように空気感染することはなく、感染患者の血液や便、嘔吐物等が傷口などから入って感染します。発症すると、突然の発熱と倦怠感などにはじまり、下血や嘔吐などもみられます。治療はエボラ出血熱そのものに対する特効薬がなく対症療法が中心となります。感染は中央アフリカ諸国に多く、水際対策によって日本に持ち込まれないよう整備されていますが、流行国への渡航には充分注意が必要です。

  • 潜伏期間 約48時間~3週間

ノロウイルス

ノロウイルスは2002年に国際ウイルス学会で正式に命名された比較的新しいウイルス症です。感染者の嘔吐物から病原菌が空気中に漂うことでの感染や便に直接触れたり間接的な接触のほか、カキ(貝)による食中毒があります。

発症すると、水様便が出たり、ひどい嘔吐に見舞われます。

ノロウイルス対策

感染力が強く、予防にアルコール消毒は効果がなく、次亜塩素酸ナトリウムによる消毒が有効といわれています。体力のある健康な方は必要以上に恐れることはありませんが、疲れがたまっていたり、免疫力が弱っている方などは要注意です。冬期間に多く発症し、免疫力の弱い高齢者施設等でたびたび集団感染がみられます。

  • 潜伏期間 約1~3日

関連記事:ノロウイルス(急性胃腸炎)

マイコプラズマ(ミコプラズマ)肺炎

マイコプラズマは4年に1度の周期で流行することからオリンピック熱といわれていますが、この周期は近年崩れてきています。乾いた咳と発熱が次第にひどくなるのが典型的な症状で、大人よりも小中学生の発症が多くみられます。限られた抗生物質のみに効果がみられます。

オリンピック

  • 潜伏期間 約2~3週間

溶連菌(ようれんきん症候群)

溶血性レンサ球菌(溶連菌)の飛沫・経口感染により伝染します。大人よりも子供に感染が多く、保育園や小学校などの集団感染にリスク管理が必要となります。症状は発熱、手足の発疹、舌にイチゴ舌とよばれる特徴的な発疹が現れます。咳はあまり出ません。再発リスクがあるため、溶連菌を完全に消滅させるまでの10日間前後はお薬を飲み続け、その後溶連菌が消滅しているかを確認する必要があります。

  • 潜伏期間 約2~5日

ロタウイルス(感染性胃腸炎)

ロタウイルスは冬に多い経口感染によるウイルス症です。乳幼児のうちに一度感染するのが一般的です。白色の下痢便が特徴的で、激しい下痢症状により重症化しやすく脱水には注意が必要です。任意のワクチンがあります。

  • 潜伏期間 約1~3日

ウイルス性肝炎

日本人の多くはウイルス性肝炎となっており、肝臓に炎症が起こる病気です。A型、B型、C型肝炎がほとんどで、感染経路はA型が経口感染、B型とC型は輸血などによる感染です。

潜伏期間

  • A型肝炎 約15~40日
  • B型肝炎 約40~180日
  • C型肝炎 約20日~120日
  • D型肝炎 約30~180日
  • E型肝炎 約14~60日
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