日本人に発症する癌で2番目に多いのが大腸癌です。早期発見、早期治療により比較的治りやすい癌で、特に薬物による治療が有効とされています。新薬の登場により前進する癌治療についてお伝えします。
抗がん剤治療は近年新薬の開発で前進している
大腸癌の薬物療法について
大腸癌は大腸の粘膜にできます。その粘膜からどれだけ深く根が張っているのか、リンパ節への転移があるか、他の臓器への転移があるかなどにより、癌の進行度合いについてステージ(ステージ0、Ⅰ、Ⅱ、Ⅲa、Ⅲb、Ⅳ)が分けられます。
大腸癌が見つかれば内視鏡で癌を取り除くための手術が必要です。
手術で癌のすべてを取り除くことが出来ればステージ0と考えます。
癌が深くまで進行してくると、他への転移が疑われることになり、手術に加え抗がん剤を使用して再発を防いでいく治療の必要があります。この場合、通常、抗がん剤治療は半年間続けて転移が見られなかった場合に終了し、その後定期的な検査による経過観察となります。
ステージ0 | 癌が粘膜の中にとどまっており、抗がん剤の治療の必要がない |
ステージⅠ | 癌が大腸の内壁に止まっている状態 |
ステージⅡ | 癌が大腸の壁の外に達している状態 |
ステージⅢa/Ⅲb | 癌がリンパ節に転移している状態 |
ステージⅣ | 癌がは嫌肝臓、腹膜まで転移している状態 |
ステージⅠ~Ⅲは抗がん剤治療を行い、ステージⅣでは癌の完全に取り除くことは困難なことが多くなるため、進行を抑える治療に切り替えていきます。
抗がん剤の種類と歴史について
現在の抗がん剤治療は主に『5-FU』や『イリノテカイン』、『オキサリプラチン』という3つのお薬が使われています。このうちオキサリプラチンは2005年に登場したお薬で、オキサリプラチンが登場する前までの生存期間が約12か月程度だったのに対し、オキサリプラチンの登場によって生存期間は約20か月に飛躍的に延びました。
オキサリプラチンが登場する以前に、日本でイリノテカインが開発され注目と期待を集めましたが、重篤な副作用がマスコミで大きく報道されたことによって、この分野でのお薬の開発が一時停滞した時期がありました。
イリノテカインもオキサリプラチンも日本で開発されたお薬ですが、当初日本より欧米で発展し、逆輸入というかたちで日本に戻ってきた経緯があり、海外での使用が認められても日本での使用が認められないというはがゆい時期もありました。
更に近年も抗がん剤の新薬が相次いで開発されており、この分野の進歩は世界的にも注目されています。
ステージⅣの治療について
ステージⅣの癌患者に用いる抗がん剤も主に『5-FU』や『イリノテカイン』、『オキサリプラチン』が使われています。これに加え、分子標的治療薬といわれるお薬の登場によってこれを組み合わせることで更に大きく生存率が伸びました。
分子標的治療薬とは
分子標的治療薬とは分子レベルで特定の標的に対して作用するお薬です。大腸癌であれば、癌の成長を助けている血管を抑制し、癌細胞に栄養を運ばないようにする働きがあります。分子標的治療薬の登場で、抗がん剤との組み合わせによって、生存率は更に約30か月にまで伸びており、今後の更なる進歩が期待されています。